政府は「2040年までに370兆円を超える官民の投資をする計画だ」と発表した。
高市首相は減税よりも投資投資!というタイプなので、おそらくこれが目玉政策という感じなのだろう。
2040年までに370兆円ということは1年あたりで26兆円程度だ。
そこまでムチャクチャ多いという感じはしないが、これまでの渋チンの政府にしてはよくやったと、とりあえず評価したい。
「370兆円超」という数字の正体
2026年6月、政府は経済財政諮問会議と日本成長戦略会議の合同会議を開き、高市政権が掲げる「戦略17分野」への投資計画を正式に公表した。
2040年度までに官民合わせて総額370兆円超を投資するという、過去に例を見ない規模の産業投資ロードマップとなっている。
誤解しやすいポイントだが、これは「政府が370兆円を支出する」という話ではない。
補助金・税制優遇・政策金融・公共調達・規制改革などを呼び水として、民間企業の設備投資・研究開発投資を引き出すという構想だ。
そもそも、この370兆円超ということは現状としては最低限この金額を投資できるのではないかな?という数字であって、予算が370兆円ありますので、この中から使いましょうというような話ではない。
つまり金額はもっと多くなると期待している、と考えられる。
社会的割引率の見直しが実現すればインフラ投資は爆増する
370兆円超の成長投資と併せて注目したいのが、国土交通省が検討を進める「社会的割引率」の見直し。
社会的割引率は要するに、公共事業を実施するかどうかを判断する際に使われる、重要な数字。
国際標準並み(実質金利)に設定すれば、現在のインフラ投資予算の2~3倍にはなるとも言われる。
道路や橋、堤防といったインフラ整備は、完成までに時間がかかり、その効果(便益)は何十年にもわたって発生する。
この「将来得られる便益」を現在の価値に割り引いて計算するときに使うのが社会的割引率。
割引率が高いほど将来の便益は現在の価値としては小さく評価され、事業が「採算に合わない」と判断される。
逆に率が低ければ、将来の便益がより高く評価され、新規の公共事業が採択されやすくなる。
日本ではこの社会的割引率が2000年度からずっと4%に固定されてきた。
他の先進国に習えば1~2年ごとに見直すのが普通だが、20年以上ずっと放置してきたのが悲しい現実だ。
老朽化インフラに起因する事故なども背景に、2026年4月の経済財政諮問会議では国交相が、公共事業の多様な効果を適切に評価できるよう、評価手法や社会的割引率の検討を進める考えを示している。
これは17戦略分野のうち「防災・国土強靱化」分野とも重なるテーマで、公共投資の増加は建設・土木・資材・インフラ関連企業の受注増につながり、民間設備投資を呼び込む「呼び水」としての効果が大いに期待できる。
つまり今まで真綿で首を絞められつづけていた、現場のオッチャンたちが潤う。
現場のオッチャンが潤えば、わかりやすく市井の人々のお財布の紐が緩むのではないかと思われる。
370兆円構想が主に成長分野への投資であるのに対し、社会的割引率の見直しは国内の基盤インフラ全体を下支えする効果があるので、両者の組み合わせで公共投資・民間投資の両面から株式市場への好影響が期待できると思う。
ただ、この見直しは2026年7月時点でまだ検討段階で、具体的にどの水準まで引き下げられるか、またいつ決定され適用されるかはわかっていない。
過去の国土交通省の議論では「比較・継続性の観点から4%維持が妥当」などという意味の分からない意見がメインストリームとなっており、必ずしも引き下げが確定した話ではないので引き続き注視していく必要がある。
この手のはなしはヤルヤル詐欺で終わることが非常に多い。
投資対象の17分野
さて、現政権が優先的に投資の対象とするのは次の17分野で、現在考えられている官民での投資額の目安は以下の通り。
- AI・半導体 (101兆円 フィジカルAIに10.5兆円、AI用半導体に68兆円など)
- デジタル・サイバーセキュリティ(55兆円)
- 情報通信 (28.8兆円)
- 量子 (13兆円)
- 防衛産業 (4.7兆円)
- 航空・宇宙 (18.5兆円)
- 海洋 (3.3兆円)
- 造船 (1.1兆円)
- マテリアル (12.7兆円)
- 合成生物学・バイオ(33.6兆円)
- 創薬・先端医療(43.3兆円)
- 資源・エネルギー安全保障・GX (28.8兆円)
- 核融合(フュージョンエネルギー) (3.1兆円)
- フードテック (9.7兆円)
- 防災・国土強靱化 (2.6兆円)
- 港湾ロジスティクス (1.2兆円)
- コンテンツ(33.7兆円)
なかでも「AI・半導体」分野は101.6兆円と突出していて、政府はAIロボット市場で2040年までに米中に並ぶ世界シェア3割超の獲得を目指すとしている。
半導体単体でも、国内生産の売上高を2030年に15兆円、2040年に40兆円まで拡大する目標が掲げられている。
という事ではあるのだが、今の時点でも需要に対して供給過多になる予想が出てきており、株式市場がここからまた急騰するというのはちょっと難しいかも。
株価が上がらなくても業界的に潤えば、別に問題はない。
なぜ「株高」につながると言われるのか
高市首相は行き過ぎた緊縮志向と将来への投資不足の流れを断ち切り、新たな市場獲得への挑戦を後押しする姿勢をいつもながら強調している。
これには政府が明確な投資先と規模を示すことで、民間企業にとっては中長期の需要が見通しやすくなり、設備投資がしやすくなるという思惑がある。
実際、市場はこうした期待を先取りする形で反応しており、平均株価は7万円程度の水準を維持し、株式・債券市場ともに「積極財政」への反応は好感触という形で表れている。
半導体・AI関連、防衛関連、造船、エネルギー関連など、17分野に紐づく業種は、今後の政策の具体化とともに物色されやすいテーマとして注目される。
骨太ショックとか言われる金利の上昇もあったが、成長率や他国の金利などもみると特に異常事態というのは起きていない、というかショックっていうほどのことか?
とはいえ冷静に見ておきたいリスク
イケイケドンドンで進められそうな財政政策だが、やっぱり懸念点もある。
- 官民の内訳はどうなるのか
- 絵に描いた餅リスク
- 国が関与するビジネスへの警戒感
- 過剰投資リスク
官民の内訳というのが実際どうなるかというのは今の時点で判明することは無理だと思うが、はたして政府の思う通りに民間の投資が進むのか、絵に描いた餅になってしまうのではないかという点。
さらに、過去の国策関連の事業のように、政府や官僚の思惑が研究開発や事業展開の妨げになり、企業が思うように進められず国際競争に負けてしまった例も珍しくない。
そもそも、国が投資する先が成長見込みをどのくらい正確に把握できるのか、過剰な投資になってしまうのではないのか?という点もある。
とはいえ、この点はどこが成長するかというのは判るわけがないので、政府が広く厚く投資をするというのは間違った方向ではないと思う。
半導体・AIのように変化の速い分野では、長期の投資計画が数年後には陳腐化する可能性が高く、難しい判断になるかもしれない。
加えて、根本的な話しとしてこの投資枠について財務省が本気で邪魔をしてくることが考えられる。
そもそも、政権基盤が危うくなればこの大きな投資の話はどっかに吹き飛ばされてしまう可能性もある。
以前つくられた、10兆円大学ファンドなどは研究に投資をするのが目的では無くなってしまい、研究ファンドの存続が目的になってしまった。
投資額は「利益の中から出しますよ」という当初の目論見よりもはるかに小規模で狭い範囲で、お得意の選択と集中なんて感じになっている。
何が当たるかなんて誰もわからんのに官僚が判るわけないだろ!と個人的には思う。
ということで、具体的な成長戦略など、今後の続報を見ていく必要がある。
まとめ ― 日本株に期待する価値は十分ある
370兆円超という規模の投資構想が動き出すことは、日本の産業政策としては歴史的な転換点といえるかもしれない。
AI・半導体をはじめとする成長分野に、官民一体で継続的な資金が流れ込むであろう構図が明確になったことで、日本株の関連セクターへの関心がより高まることと思う。
ま、半導体に全振りはおススメできないが。
もちろん、「370兆円超だからこの株が上がる!」と単純に言いえるものではない。
ただ、めずらしく政府が成長戦略の実弾を伴った具体案を出した今のタイミングは、日本株がどのような分野で成長期待が高いのかを知ったり、日本株をポートフォリオの中に入れることを検討するには良い機会なんじゃないだろうか。
個人的にはインフラ関係の会社にかなり投資妙味があるとみている。
ま、でも安全に行くなら海外の超大口が投資するところを地道に見つけるのが良いのでは。
知らんけど。

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